仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

「泥」の先の笑顔

近頃、IT業界では泥が流行っています。泥だ泥だ言われると、私はどうしても10数年前の「泥」の光景を思い出さずにはいられません。といってもデスマじゃなくて。
ほとんどの人は知らない世界だと思うので、ちょいと思い出を語ります。


山形県金山町。そこで、毎年7月末に行われた、伝説のオフロードバイクイベントがありました。RaidKamuroといいます。
設定されたコースを一定の決まりに従ってバイクで走る、ラリー形式のイベントです。
バイクが大好きな人たちが全国から集まって、地元の人たちの暖かさにふれ、金山の自然を楽しむ三日間。バイクっていいなぁ、仲間っていいなぁ、自然ってありがたいなぁと心から実感できる、とっても楽しいイベントでした。
私は3回ほど随行者で参加しました。とてもコースは走れないので(><)

で、名物セクションがありました。
ショベルカーで腰ぐらいの深さに長方形のプールみたいな穴を掘ってね。そこに水をどばどばどばーと入れましてですね。
そこを走るんですよ!そのまんま、泥のプール。
実際の山を走る時もマディ(泥)走行はあります。でもここまですごいのはなかなか自然にはできない。

さて、バイクが飛び込んできます。
転ぶ人(殆ど)、最初から降りて押す人(それでも沈める人多い)、うまーくバランスを取って見事乗ったまま抜ける人(少ない)。でも、何が起きても、ライダーは笑顔、回りは「フー!」とか「ひゃっほうー!」「いえーーい!」とか奇声を上げて拍手。だって見せ場なんだもの。転んだからってそれは「下手」ではない。ここは根性を見せる所。泥に入るだけで賞賛。転ぶ、沈む、エンスト、キック。エンジンかからない、引き上げて、押して、ようやく泥から出て、またキック。ここでエンジンかからずタイムアウトの人もいる。あー大変。
そして面白いのが、バイクが転ぶ度、泥に飛び込み手伝う人がいる。タイムアウトしたライダーだったり随行者だったり。その人たちは当然、全身ドロドロだ。でも思いっきり笑顔だ。RaildKamuroではみんな、助け合う。コースの途中でトラブルが起きたら手を貸す。単なるタイムの競い合いじゃない、暖かさが満ちていた。みんな、助け合うのがかっこいいライダーなんだなって身に滲みて実感した。


なんとなく、IT業界で言う「泥」に似たようなところがありませんかね?
泥ってまちがいなくきついし、好んで飛び込みたい人も少ない。でも敢えて通ることによって得られる根性、スキルがある。そして泥の中で助け合うことの有り難みが実感できる。多分回りが笑顔でその根性を讃えるからなんでしょう。例えば泥でこけたら「へたくそ」とブーイングされたり「可哀想」と思われたり、全没して途方に暮れても放置されるなら、誰もあのセクションが楽しいとは思わない。
いや、前から思ってたんだけど、IT業界とオフ車乗りにはなんか共通のものがあるなと。
梅田望夫氏の「高速道路とけものみち」の比喩も、薮こぎ(道無き道を道と思い込んで進むこと)を鮮明にイメージしたし。


ところでまったく話は変わりまして。その伝説のRaidKamuroの地で、今週末、Tour de Kamuroが開催されます。
多くの中年ライダーたちが「あのRaidKamuroの復活!」と胸を踊らせましたが残念ながらそういうわけではないようです。しかし、若いスタッフたちは RaidKamuroをしのぐ楽しいものにしようと頑張ってるみたいです。ブログに掲載されている見覚えのある光景はやっぱりすっごいワクワクするし懐かしい。あの、スタート時の抜けるような金山の空に響き渡る、大地を揺るがすようなエンジン音、ライダー達の真剣な表情が目に浮かび、なにかこう腹のあたりから熱いものがこみ上げてきます。随行者すらこうですから、ライダーたちはどんなにか熱い血をたぎらせてやってくることでしょう。まったく未知のイベント、どんな風になるのかなぁ。私は参加しませんが知り合いが何人か行くらしいので、報告を待ちます。