仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

木下斉「稼ぐまちが地方を変える」

補助金依存の地方創生にいつもtwitterその他でかみついている人。「補助金を当てにするな原理主義者」と呼ばれているそうな。 そのとんがった姿勢が面白くて、本を図書館で借りて読んだら思いの外良かったので、買った。

 

 

私はまちづくりには興味がないが、まちづくり事業をコワーキングスペース運営に置き換えて考え、読んでいる。共通点が多いのだ。

補助金助成金を貰うためのコンサル業者もたくさんいるのに、補助金に頼ってしまうと危険だというのが前半の主張。木下さんの体験もまじえて、ばっさばっさ切り捨てる。

言い方は悪いですが、補助金とは麻薬のようなもの。それまでまじめに生きてきても、一発チュッと打たれただけで一斉におかしくなってしまうものなのです。 (p.28)

補助金助成金を活用してうまくやっている人もたしかに、いる。

コワーキングスペースをつくるのでまずは使える補助金を申請します」と、当然のように言う人もいる。 はっきり言ってお金は常に欲しい。貰えるんなら下さい!だ。

私も補助金を申請しようとしたことがあった。でも、商工会議所の人に助言を受けにいくにつれ、私もおかしくなってしまった。補助金の出るのはこういう分野ですと言われると、それまで思いもしなかった設備の改修の検討をはじめてしまった。考えもしなかったチラシ作成も検討してしまった(これは実際に作ったのだけど)。結局、申請書類作成のために何度も商工会議所に行ってノラヤのオープン時間を減らし、睡眠時間を削り本来の業務に支障が出たりしたので、ばからしくなってやめてしまった。

でも、やめてよかったと思ってる。あのまま身の丈に合わないノラヤ改修をしていたらどうなってたか。

補助金がある間だけ人を雇って、期限が来たらポイ、って、良く聞く話だ。 コワーキングスペースだって、助成金が貰えるからと作って、続かなくてすぐ閉鎖しちゃったとこもあるし。

木下さんは、安易なクラウドファンディングの活用にも疑問を述べている。

逆にリスクが大きいのは、外部から積極的に資金を調達しようとすることです。夢を抱くのはいいですが、まずは身の丈を考える必要がある。(中略)
「地元にはお金を出してくれる人がいない」と言って、すぐにクラウド・ファンディングに飛びつく人がいまずが、自分も、地元の人も誰も一線も出さないような取り組みに不特定多数から資金を集めてやるというのは、少し疑問なのです。

(p.149-150)

 これは私もそう思う。コワーキングスペースって人と人との繋がりを重視したいからクラウドファンディングのような資金調達が一見向いていそうだけど。私自身クラウド・ファンディングで支援してちゃんと支援したかいがあったなと思えたのは半分以下。だからそもそも、クラウド・ファンディングを見る目がかなり冷めてる。実績もなにもないしお金もないのでクラウド・ファンディングで調達しようと思います、なんて、貧乏人救済装置じゃないんだよと思う。

 

また、すごく共感したのは「まちづくりワークショップ」の話。

この手のワークショップでよくある風景はこんな感じです。いくつかのグループに分かれた人たちがテーブルを囲み、大量のカラー付箋を活用して意見を出しあい、それをまとめて結果をプレゼンします。他のグループは「素晴らしい」と絶賛します。もしくは「これはこうしたほうがいい」と修正提案をしたりします。さかんに意見が出て、盛り上がった勢いで飲みに生き、地域の未来について熱く語り合います。それは楽しいし、いいことです。しかし、それでおわりなのです。 後日、「あのプランはどうなりました?」と訪ねても、誰も覚えてすらいない。実現の可能性もゼロ。要するに関係者が自己満足しているだけで、誰も真剣にまちづくりのことなど考えていないのです。 (p.112)

これ、笑ってしまった。私も経験がある。付箋をぺたぺた。意見出した。楽しかった。なんかりっぱなことをみんなでやった感があった。でも「これやろう!」「これはいい!」って言ったやつ、どれか実現したっけ。ほんとこれ、ただのエンターテイメント。

 

結局、多くの人が偉そうに集まって、イベント連発して、もらえるお金は外部からもらって、誰も身を傷めず、自分ごとにしない。そういうのは誰も本気にならないし、事業がうまくいかない。

ノラヤの場合は、なにもかも自己資金だし、運営者は一人だし、使ったお金が無駄になるのは嫌だから、儲けたい。本書の後半は成功のための10の鉄則で、非常に参考になる。それぞれについて詳しく説明すると長くなるのでタイトルだけ。

  1. 小さく始めよ
  2. 補助金を当てにするな
  3. 「一蓮托生」のパートナーを見つけよう
  4. 「全員の合意」は必要ない
  5. 「先回り営業」で確実に回収
  6. 「利益率」にとことんこだわれ
  7. 「稼ぎ」を流出させるな
  8. 「撤退ライン」は最初に決めておけ
  9. 最初から専従者を雇うな
  10. 「お金」のルールは厳格に

まちづくりの鉄則だから3と5はちょっと違うかなという気もするけど、たとえば地方でまちづくりの役割も持たせたコワーキングスペースを作りたいとしたら、全部参考になるだろう。力のない第一世代のコワーキングスペースをやろうとしているなら、特に。ノラヤの場合は、小さく始めましたよ。補助金当てにしてませんよ。パートナーはいない。全員の合意どころか個人の独断でやってる。先回り営業はしなかった。利益率はとことんこだわってる。稼ぎは流出するほどないなぁ。撤退ラインは最近決めた。専従者なんてもちろんいない。余談だけどスタッフ最初から雇うコワーキングスペースって持たない。お金のルールは厳格です。

 

身の丈を知ること。 おそらくそういうことだろう。 成功しているコワーキングスペースの先輩達は補助金などは貰ってない、という。一人または少人数で事業を行って、つぶれたらアカンというヒリヒリした気分を味わいながら、どうやって収益をあげていくか考えてる。よそからのお金を当てにしないでやってきてよかったと思えるよう、ノラヤでも徹底して考えていこうと思う。

前半の「コストの削減をした」という例でゴミ収集の値段を下げたエピソードがあって、はっとして、今までこだわっていなかった消耗品コストを見直してみた。削れるところは削り、新しく何かを買う時は「それでいくら儲かるのか?集客になるのか?」を徹底していかなければ、と思った。