女川はなにもかも綺麗だった
先日息子が部活の合宿でいないすきに、突如思い立って女川までバイクで一泊旅行してきた。
なんだかね、金がない金がない言う割にこういうのに散財するよね、わたし。
はじめに
女川はいつか行ってみたい場所ではありました。津波で流されたあと再生した商店街の写真はよく見る。孤独のグルメに出て来たし、フリーランスを誘致しようといろいろ仕掛けてたり、元気な人が多い印象がある。私の周囲の社会貢献とか震災復興とかやっている仙台の人たちはみんな女川行ってるし。
それからコワーキングスペースもある。復興支援関係で活用されているようです。
あと、トレーラーハウスの宿があるんですよね。憧れ。アウトドアっぽくて。
でも……特に用事もないし遠いし、三陸に旅する機会があったらついでに寄れたらなぁ、としか思ってなかった。
今回行こうと思い立ったのは、私が最近クラフトビールにはまって、仙台のクラフトビール屋さんを調べていたら女川にも一軒クラフトビールの店があるらしいことを知ったから。
ビールのためなら女川も遠くない。
JRで行くか?バス?ちょっと悩んで、バイクで行くことにした。バイクで行くなら泊まるしかない。調べたら、トレーラーハウスの宿が楽天トラベルにあって、溜まっていた楽天ポイントが使えたので思い切って予約。
4/3
バイトを13時までやってから出発。テント積まないから荷造りは楽だけど、もたもたしていて結局出たのは15時すぎだろうか。
前から気になっていた利府のお蕎麦屋さん「角べえ」で天ぷらそばを食べた。立ち食いっぽいそっけない店舗でこの濃い味が、うまい。
三陸自動車道で女川へ向かった。SAが好きなので寄ろうと思っていたら、途中にあるのが春日PAだけだとあとで知った。寄れなかった。でかいテントこそ積んでいないけど、風にあおられてふらふらして怖いし寒い。軽いバイクは高速や長距離だと疲れる。400のバイク欲しい。いや大型がいいか。
高速降りてから休憩した石巻・渡波のファミマは休憩スペースも電源もあってよかった。体が冷えていたし腹へった。でも夜おいしいもの食べるんだし我慢。コーヒーだけで早々に出発した。
だんだん日が暮れてきた。石巻から女川までの道は途中不安になるくらい山で、本当にこの先に町があるの?私間違っていない?と、思い始めたところでようやく集落が見えてきた。
新しい家、看板、綺麗に舗装された道路、まだ多い空き地。
コンクリで固められた山の法面。
ああ、そうか、津波で全部流されてしまったのだ。画像でなくリアルに見ると、事実として突きつけられる。この横断幕の決意が胸に迫る。
「女川は流されたのではない。新しい女川に生まれ変わるんだ」
新しい女川にたどり着いた。
宿に着いたのが18時近く。「ホテル・エルファロ」です。
バイカー応援プランということでトレーラーハウスの前にバイクを停めさせてもらった。しかしバイカーというのはちょっと……ライダーなんだけどな、私。
今回、一応PCも持って来て多少作業はしたかったんです。でもPCでもスマホでも、Wifiが不安定すぎる。うーん、Wifiが使えないとは……息苦しい。
とにかく腹が減ったので、Wifiを諦め、計画通り温泉に行って風呂上がりにビール飲みにいくことにする。
宿からはすぐ、女川駅。こうして電車も見える。
そして駅舎の中に温泉、「ゆぽっぽ」が!!!!
とてもいい温泉だった。広いし明るい。壁画の鹿がいい。
天井もいい。
マッサージ椅子も寝るとこもあった。ここが500円かー!*1いいなぁ。女川いいなぁ。住みたいなぁ。温泉だけで住みたくなった。
バイクで冷えた体が芯まであたたまった。本当にありがたかった。
一応化粧は落とさず、ビールを飲みに商店街に向かった。
……駅前から歩くが、全然人がいない。平日夜だから仕方がないのかもしれないが、 またまた不安になる。
煌々とあかりは点っている。
そうか、綺麗なまちはできたけど、定着する人はまだまだ増やさなきゃいけないんだな。
だれもいない「シーパルピア女川」を歩いて、お店についた。ひときわ、明るい空間だった。
なぜか食べログのリンクが仕込めないけど、「ガル屋」です。仙台ビールマップにこうある。
孤独のグルメで話題になった女川町に、国内外のクラフトビール樽生が10TAP!!新しくなった女川駅前を散歩しながらビールを楽しみませんか?ブリュードッグやミッケラーなどの珍しい輸入ビールも樽生で飲めます!!人気のビールは「希望」の意味を込めた女川ホップペールです。日々変わりゆく女川町を是非見に来てください!!
わくわくしながら店に入った。
店内では若い人たちがわいわいやっていて、店主さんも会話に混じっている。
カウンター席がないので、空いていた方の大テーブルに座る。黒板のメニューを見るが……あれ?クラフトビールは……どれ?店主さんのいるカウンターへ。
「あの、こちらクラフトビールのお店だと聞いたのですが」
「いちおう女川ホップペールがこちらの地元のビールです」
「では、それを」
うん、女川のビールなら飲まなきゃね。さて、何を食べよう。再び黒板のメニューを見るが……女川っぽい食べ物が、見当たらない。うーん。とにかくお腹空いてるし、ポテトサラダを頼んだ。
あーやっとビールにありつけたー。
ビール、おいしい。
私はうまく表現するすべを知らないが、たいへんおいしい。ポテトサラダも、普通においしい。
そうこうしているうちにお店には、どやどやたくさん若い人たちがやってきた。見覚えのある起業家もいる、自分が泊まっているホテルの名前も聞こえてきた。みんな常連さんなんだな。テーブルを占領しているのが申し訳なくなってきた。
2杯目を飲みたいが……すごく度数の高いクラフトビールがあるらしいがそれは避けたい。でも、他にクラフトビールはどれ?ブリュードッグやミッケラーはないようだ。ポスターはあるのに。カウンター席だったら店主さんが近くてもっとお話できそうなものだけど、店全体が仲間内のなにかの話で盛り上がっていて、クラフトビールについて詳しく話を聞ける雰囲気ではない。
なので、女川ホップペールともう一杯と、プレッツェルを頼んだ。プレッツェルってあの8の字みたいな硬いパンみたいなやつだよね!ビールにあうし……
あれ、思ってたんと違う……
ここは、きっとハッカソンとか起業イベントとかやって、すでになんか食べたあとで、仲間とワイワイ!友達ともっと飲もうぜ!って連れ立って来るにはぴったりなんだろうな。一人でしみじみクラフトビールと女川のうまいものをいただこうと思っていたので、少々求めるものが違ったようだ。
そこで早めに切り上げ、お店を出て、しばらく海側に歩いた。……やっぱり暗くて誰もいない。海風が冷たい。でも、ファミリーマートの明かりを見つけた。
心底、ほっとした。
コンビニで欲求を満たすって旅における敗北者みたいだけど、そんなことないわ。全国どこでも同じメニューがあるコンビニって本当にありがたいと思った。
そうか、コンビニって日常を取り戻しモードリセットできる場所なんだ。コンビニバイトをしている私が、ちょっと自分の仕事を誇らしく思った瞬間だった。
ファミマでビール一缶とサラダを買って宿に戻って二次会をした。PCを開いて情報を調べようとしたが、やっぱりWifiが不安定なのでばたんきゅーと寝た。
4/4
朝、ちょっと朝食を入手しに、ファミマへ散歩した。さっさと移動して「上品の郷」に行こう。ここは知人がお湯を絶賛していたので、絶対入ろうと思っていた。ランチバイキングもいいらしい。
ところが、国道398、まったく道が進まない。工事で片側通行でもしているのかと待った。海中での潜水作業を眺めて暇を潰していたが、さすがにおかしい。
引き返してセブンイレブンで聞いた。
「あー、華夕美のあたりで事故あったらしいですよ、さっき防災無線で流れてました」
がーん。しょうがないのであんぱんを食いながら道路を眺めていた。全然動く気配がない。
しょうがない。これは……
女川でちゃんとうまいもの食べて帰れという神の声だ!
女川駅前に引き返した。昼ならいっぱい食べるところあるはず!
まずは、コワーキングスペース「女川フューチャーセンターCamass」へ。
ドロップインをお願いした。
広い窓に面するカウンター席で、PCを開いてノラヤのウェブを更新した。もちろん快適にWifiも使える。
あー!ネット依存の人間ってWifiがあると酸素吸入したみたいに生き返るわ!!Wifiありがてええええ!
コワーキングスペースってこんなにありがたいものだったとは!!(もっとみんな使え)
テーブル席、打ち合わせコーナーもあり、とても広かった。ノラヤの10倍くらい。
こちら、タイルを埋め込んだ長机が素敵です。
ふかふかのソファがある席。ちょっと寝てしまった。
Googleマップの渋滞情報を見ると、お昼になっても全然復旧はしていない。
お昼は「おかせい」へ。女川丼(小)。おいしかった。小は、ごはんの量が違うのだそうで。とにかくそれでも普段の私にとっては倍くらいの量です。
CamassにもどってさらにPC作業。居心地良いのでつい長居してしまった。
おもしろかったのが、近所の小学生たちが無料スペースに集まっていたこと。お昼になったら、ファミマでなんか買って来て、そこで食べて遊んでる。学童みたいだ。
さて、のんびりしてはいられない。
実は午後から雨の予報だったのだ。雨が降り始める前に家に着きたかった。2時すぎにCamassを出た。遅すぎる。
398の事故現場は相当酷かったらしく跡が残っていた。
走るにつれ日は暮れ、どんどん気温が下がっていった。上品の郷を目指したのに道を間違え、間違いを取り戻している間に雨が降って来た。寒い。とにかく温泉であったまらなくては。早く帰らないと息子が先に自宅に着いてしまうけど、温泉入らないと死ぬ。
こちらのお湯を見て歓声をあげそうになった。とろりと濃い、しろっぽく茶色に濁った湯。これ、本当にいい湯だ!
何時間でもつかっていたかった。しかし先を急がなければならない。私にしては早めの入浴で終わらせた。
上下をカッパで装備し、雨の中仙台を目指した。
高速に乗るべきか。下道と、どっちが安全か。悩んで、思い切って高速に乗った。
しかし、無理だった。ヘルメットのシールドは水滴ですぐ見えなくなる。しょっちゅう、片手運転でぬぐう羽目になった。怖くてスピードをあげることができない。トラックに追い抜かれると水しぶきで視界がゼロになる。
早々に、松島あたりで一般道に降りてしまった。
またまた全身寒くて死にそうな気分になった。辛くなったので靖幸ちゃんの「いじわる」のせりふを叫びながら運転。仙台の街明かりが見えてきたときは、脳内で「Super Girl」のイントロが流れ出したね。
皮肉なことに高速を降りたあたりから天気は回復したので、疲れから黒塗りの高級車に追突しないように注意して運転し、自宅に着いたのは19時すぎ。
まとめると、女川はなにもかも綺麗だった。気持ちがよかった。別荘地のような雰囲気が漂っていた。
私は津波に流される前の女川を多分知らない。これからの記憶しかない。たくさん宿もあったし、ネット環境に困ったらCamassがあるし。旅人は女川に行ったらいいと思いました。
あと上品の郷はすごくいい湯だったのでまた行きたいし、途中で見つけた芭蕉の湯も気になったので行きたい。
*1:あとで知ったのだが、100円引きクーポンがいろんなサイトにある。次回は利用しよう!