仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

「健康を食い物にするメディアたち」朽木誠一郎

 サイエンスバーなどでニセ科学に惑わされない正しい科学的知識を伝えたい私としては、これは、買わずにはいられない。しかし。

最初に謝らなくてはなりません、ごめんなさい。

私が朽木さんのことを知ったのは、ぱくたその素材としてが最初。「意識の低いデブ」のインパクトが凄まじくて医療系ジャーナリストの方とは知らず。

よりによって昨年、ノラヤサイエンスバーのニセ科学の会回に朽木さんの画像を使ってしまいました。(左上)水素水のようなものを信じて飲んでる系の雰囲気で。

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あんまりですよね……

 

さて、この本。熱いです。

医療系の情報、いかにおかしいものが世の中に蔓延してきたか。ネット、広告、本、テレビ、あらゆるメディアで健康になりたい人の気持ちが利用され、情報を信じ命を落とす、悔しい、悲しい思いをする人がたくさんいる。どうしてこうなってしまったのか。じゃぁこの状況を変えるには?実際にwelq問題で状況を大きく動かした著者の「変えなければ」という、真摯な思いがすごく強かった。

インチキじゃない、正しい情報がちゃんと伝わるようになって欲しい、そう思っている人はある程度はいるはずだ。

私もノラヤでサイエンスバーなぞやっているのは、「一般人が楽しく正しい科学的知識に触れる場所が仙台にない」と思ったからだ。

冒頭の画像を宣伝に使った第13回のサイエンスバーでは、ニセ科学に関心の強い方が20人集まり、小波先生の話を聞き、ディスカッションした。本書にも出てきた小林製薬の帽子をかぶった女性の広告の話題も出た。でも「どうしたらニセ科学の蔓延を止められるか」をディスカッションのメインテーマにするのは、断念した。一緒にイベントをやった人と相談して、これまで戦ってきて徒労に終わるのをなんども見ているし、たぶん2、30分話合っててもうまく答えはでないよ、ということになったのだ。

しかし「こんなん信じている人いるんだよ、ばっかでー」で、終わってはいけないんだろうなと思っている。なんとかしたい。

身近なところだとうちの母は看護師だけど昔から標準医療否定派で民間療法にどっぷり。私はそんな家庭環境の影響が今でも多少抜けない。母はがん放置療法で有名な某医師の本が好きで何冊も持っている。弟と「あれは困ったなぁ」と言っているがどうしたらいいかわからない。

うちの母みたいなケースは難しいとしても、まだ、「ネットでこう書いてたからこうなんだって!」程度に軽ければ、本書のp.144からの「5W2H」で検証するのが有効だろう。医療デマが溢れている事実すら知らない層がまだまだ多いのだから。

だいたいにして「××したければ◯◯しなさい」「◯◯さえすれば治る、よくなる、やせる」はおかしいに決まってるんだけど、すがりたい人はそういう命令調の楽そうなものに飛びついてしまう。

 

私は思うのだが、個人の情報発信が悪気がなくて、怖い。よかれと思ってやっているから。たとえGoogleで検索順位は低かろうと、SNSで仲間内で広まっていくから。

仲間内で「自閉症は作られた病気」「子宮をどうのこうの」「がんは◯◯で治る」などと影響力のある人が言っちゃうとわーっと広まってしまう。

SNSだと「この人が言うんだから(やってるんだから)きっとそうなんだ!」ってなっちゃうんだよね。芸能人がやってる高額な医療も影響が大きいけど、身近な知り合いのほうがもっと怖いんじゃないだろうか。しかも「やりなよ」って直接勧められたりして。

間違った情報のつながり、じゃなく、正しい情報のつながりを作ろう。それが著者の提案「#情報のリレー」だ。

実際に怪しい情報は声をあげれば直接規制、自主規制が働くかもしれない。welqのように多くの人に知られたらGoogleまでも動く。

これは怪しい、おかしいと思ったら「#情報のリレー」のハッシュタグをつけて発信すればバトンをつなぎ伝わるようにします。そう朽木さんは宣言している。

「誰も医療デマに騙されることのない世の中」は、実現できます。

こう断言しているんだから、すごい。

 

背筋が伸びる。そう、この本を読んだからには、情報のリレーの担い手になっているということだ。

「誰も医療デマに騙されることのない世の中にしよう」が、大きなムーブメントになるよう、私も微力ながら協力したい。

医療デマで食っている人からの反感も買うだろう。セミナー業のひととか。

でも、やっぱり、人の命に関わることだ。おかしいことはおかしいと言い続けたい。