仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな48歳、高校生男子の母。

「未来職安」柞刈湯葉

 ポッドキャストの「いんよう!」で紹介されていて柞刈湯葉さんの本を読みたくなった。お正月帰省の前に書店で買ってみた。

未来職安

未来職安

 

 なお柞刈湯葉さんは本業が研究者。たまにRTで回ってくる。

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未来の職安のお話だ。(そのまんま。)

未来は働かなければならない人がほとんどいない。ほとんどの人が「消費者」となって支給される生活基本金で暮らしている。ほんの2%の人が「生産者」となり、仕事をしている。世界はいろいろと自動化・機械化され人の代わりにAIが考えロボットが働いてくれるからだ。現金もほとんど使われない。いい世界だ。そんな未来になって欲しい。

そんな状態でもなぜか「働きたい」という人が、ごくたまにいる。学生の時から優秀でその才能を世のため人のために活かすべく当然のように生産者になった人。そして優秀でもないけど事情により生産者になりたい人。後者のふわふわした人が、舞台となる職安にやってくる。所長(レアな、生猫)と経営者の大塚さん、主人公の目黒の3人(?)のもとにやってくる依頼人をはじめさまざまな人が繰り広げる騒動。騒動は起きるけれど、妙にのんびりした空気感とともに平和に日々が進む。

なんでもネットで情報が手に入るのは今と同じ。消費者と生産者の生活格差は存在してて、消費者の行かないいい店の写真をシェアしていいものかどうか悩んだり、生産者なのに消費者クラスの服を選んで波風が立たないようにしたり。こまごましたエピソードが妙にリアル。

働いてもお金が稼げず、家族を持つのがしんどい今の世界と逆に、「消費者」として生きるのに家族を持つと都合がよくなるようにできているのも、面白い。

未来職安の生産者たちは、全然働いている感がない。必死感も使命感もない。職安の人間2人はいつも暇を持て余している。唯一目黒の友人のフユちゃんがITの仕事をしているが、激務というわけでもなさそう。どうやら未来では働きすぎて死ぬとか精神を病むということは存在しないのだ。今ではごくごく限られた優秀な人だけが勝ち取れる、精神と生活の両方の安定。それが未来では生きているだけで得られる。ん?ちょっとまって本来はそうであるべきではないのか…。

早く消費者だらけの世界が来て欲しい。働かずに暮らしたい。働きたくない。……誰にも必要とされなくても、誰にも認められなくても、世界にひとつだけの花じゃなくありふれた草でも砂みたいな存在でも、生きていける世界が来て欲しい。

ということを、風呂やトイレでこの本を読みながら思う。

 

実家でこの本を読んでいたら弟が「その人の横浜駅SFがおもしろいぞ」と言ってた。こちらのほうが有名らしい。読まなければ。

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

 

この「横浜駅SF」は未読なのだけど、柞刈湯葉さんは椎名誠の「アド・バード」に影響を受けて「横浜駅SF」を書いたそうなので、手元にあった(というか弟の本がノラヤにある)アド・バードを先に読んだらすげー面白かった。 

アド・バード (集英社文庫)

アド・バード (集英社文庫)