仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな48歳、高校生男子の母。

「そばですよ たちそばの世界」平松洋子

そばですよ。

立ち食いそばではなく、立ちそば、という。「喰い」が入るより品がありますね。

そばですよ (立ちそばの世界)

そばですよ (立ちそばの世界)

 

平松洋子さんはおいしいものをおいしそうに表現するのにとにかく長けている。そして立ちそばも大好きなのだろう。おいしそう、が溢れている。東京あたりの、チェーン店ではなく、個人店でやっている小さな蕎麦やさんをめぐるレポートだ。そこのメニューを実際に食べて、そして店主にお話をうかがう。食べ物を表現するのに、そうかこういう表現があるのかと、にやりとしたり膝を打ったり。勉強になる。こういうことばを使えるようになりたい。

で、登場するお蕎麦屋さんがまた素敵だ。おそばやさんなのに、おそばだけじゃない。コロッケがおいしかったり、てんぷらに特徴があったり、カレーがおいしかったり。麺やそば粉やつゆや、そばそのもので味を追求しているのはもちろんだ。いやー、奥が深いもんだなぁ。

私は「そば神(そばかん)」こと、そばの神田をこよなく愛するのだが、そば神ラバーのくせに春菊天そばしか食べてこなかった。ちなみにそばの神田とは仙台を代表するB級グルメであり、仙台に来て牛タンや寿司を食べる金がないならそば神を食べるべきである。そば神はこちら。

www.sobanokanda.com

こんなに立ちそばの世界は広いならば、もっといろいろ食べて学ぶ、いや、楽しむべきだよなぁ。

この本でも、つゆ、とか、かえし、とか、だしとか、用語からして私はわからんのである。あれはただのめんつゆではないのか。しかも、冷やしと温かいのと、つゆを使い分けているとは。

ちなみに「つゆ」「かえし」「だし」は、ここに詳しく書いてあるぞ!もちろん各蕎麦屋さんは配合を変え材料を変え工夫しているのだ。

www.higeta.co.jp

 

そばを食べたくなった私は、先日さっそく東一のそば神に行ってみた。女性ひとりで立ちそばをすする人に私以外であったことがない。と思ったら、この日は私の他にも2人くらいいらっしゃった。よいことだ。

店に来た人はみな、目的を達する以外の無駄な動きはせず、占領する場所を最低限にして、すみやかにさっと食べてさっと出ていく。あの清流にも似た空気はいつ来ても気分がいい。

私はいつもの春菊天をやめて、げそ天そばにした。410円。結局あまり冒険はしない。つゆがしみる前はカリッと、やがてじわじわと柔らかくなる変化が好きだから、私はかきあげを選んでしまう。特に移行期におけるカリッとふわっと両方が味わえるときと、ほぼ溶けてそばといっしょに啜っている段階が好きだ。

カリッとしたのを味わっていると、目の前の60過ぎ男女二人連れ(かけそば)のうち、おばさんがいきなり入れ歯を外した。すばやくまた入れた。カウンター越しにそんなのを目にした程度で食欲が減る私ではない。

そば神の客は総じて無口だが、この二人はぽつぽつ喋っていた。かけそばを啜りながら、

「だからね、俺は目を皿のようにして探したんだよ。でも見つからなかった」
「ふふっ。目を皿にしたの」おばさんが笑う。

へぇ。「目を皿にする」なんて久しぶりにリアルで聞いたなぁ、と思った。おばさんが

「ねぇ、なんで『目を皿にする』なんていうんだろね」

と、疑問を口にする。
「ええっ?な…なんでだろうねぇ。目を…皿に……ううむ」
「目を、うんと細くするのかしらねぇ」
「ええっ!?」
二人は、ふふふと笑いあった。
私は食べ終わったのでささっと帰った。目をうんと見開いて皿みたいに円くする、といいう表現じゃないのかねぇ。などと考えながら。

実は久しぶりのそば神だった。普段、町中に出ない生活をしているので近くに行かないのだ。でも、バイクで駐輪場使えば無料時間内に食べ終わるし。もっとたべよう、立ちそばを。決意を新たに。