「あの店やる気がない」と言い放つ前に
コンビニ勤務の私は、他の店に行って自店と比較してつい色々見てしまう。売り場の様子、スタッフの動き、品揃え、その他。
同じ系列店で、家に近いので時々利用するお店がある。規模は小さめ。
その店に新商品を買いに行って、置いてなかったことがよくある。「今日から新発売!」と、わくわくして買いに行くと、ない。定番商品もないことがある。そういうことが続くと困るし、行かなくなってしまう。
その店は向かいにライバル系列店があって、そちらの方が賑わっているようだ。広さは同じぐらいなのに。スタッフもあまり元気がない。
残念だなぁ。
先日息子とその店の話題になった。
「あすこにコンビニあるじゃん」
と言われたので、つい
「あー、あのやる気のない店」
と言ってしまった。
「やる気がない、とは」
息子が言うので、説明する。
「だって新商品買いに行っても全然ないんだよ。品揃えちゃんとしてないし」
「それは、やる気の問題ですか」
ドキッとした。
「ちゃんとできない、事情があるのではないですか」
はっとした。
息子の言う通りだ。
わたしたちは、外から見える事象でしか判断できない。コンビニの業務も人によってはレジ打ちしかしてない、とても楽な誰でもできる仕事のように思われているかもしれない。だが、裏には発注清掃鮮度管理もう山のように仕事がある。
それをわかった上でみていながら、品揃えが少ないことを「やる気がない」などと表現してしまっていた。
たまたま、月曜日の入荷対応のスタッフが休んでしまったのかもしれない。発注を入れるタイミングがうまくいかなかったのかもしれない。新人さんが入っててんやわんやで手が回らなかったのかもしれない。店舗があまり大きくないから人が増やせないのかもしれない。理由はいくらでも思いつく。
ぜんぜん「やる気」で解決できる問題ではないのだ。
私の好きな、とあるラーメン屋さんは、休みが多い。理由に「家族の看病で」とよく書かれているので、具合の悪いご家族がいらっしゃるのかもしれない。
でも、それを笑いながら「さぼってる」と言う人がいる。
自営業がさぼると、当然売り上げは減る。さぼってるはずがない。やむをえず、閉めているのだ。そのお店だって、なにかしら事情があってそういう状態なのだ。
ほんの一部見える事象だけで判断し、つい精神論に行ってしまって、勝手に不快感を感じてしまっていないだろうか。
息子は私を睨んで言った。
「あなたは、ずいぶん、偏った物の見方をするようになりましたね」
まったく、そのとおりだ。
以来、コンビニでも飲食店でも他の業種でも、「なんでこうなの?」「だめじゃん!」などと思った時は「でも、なにかそうせざるをえない事情があるのかもしれない」と考えるようになった。