仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

なんともいえず良いです〜「家守綺譚」

「いえもりきたん」と読みます。
ネットとかビジネスとか、ちょっと脈拍が上がりすぎるような本ばかり読み続けたあとに、丁度良い本でした。
「俺、とうとう50になっちまったぜ」。知人のおっさんは15年間変わらない風貌で微笑み、とても卑猥なデータを焼いたCDを渡した。そのCDは付箋付きだった。「これはあなたにおすすめの本です」…数ヶ月前、そんなことがあって、このたびその付箋に書かれていた本をようやく図書館で借りて読むことができたのでした。


川沿いの露天風呂につかって、空を見上げたり川面を見つめたりしてぼーっと長時間すごすようなそんな気分になる本。(ううむ、件のおっさん、私のことを良くわかっていらっしゃる。)
実は私はITとかRailsとかネットとかワーキングマザーとかどうでもよくて、本当はこんな生活がしたかったんじゃないか。ただひとり、電気もろくにつかない家で庭を眺めて。庭の木々、疏水、池。歩けば山。季節のうつろい。近所の者との深入りしない飄々としたつきあい。何が起きても、ああ、そんなものかもしれない、それが普通で、見えないこちらのほうが、便利なものを手に入れた分、目が曇ってしまったのかもしれない。そんなことをちらりと思いつつ、つつがなく過ぎる時を追って、ぷつんと終わる。しみじみと余韻が残ります。

ただよう雰囲気は杉浦日向子の百物語に似ているかも。