仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

白夜の国のヴァイオリン弾き

これもひとのブログで紹介されて知ったと思う。図書館で借りた。裏内表紙に貸出カードが挟まっている、古い本。
すっごくおもしろかった。読んだあと、すがすがしい気分になった。こんな人生あるんだ。
ペリマンニ」という人たちがフィンランドにいる。町に根ざした音楽隊で、様々な行事に出掛けて行っては演奏する。メンバーはみな仕事を持っていて課外活動的に演奏しているが、週に何回も演奏したり、しかも深夜に及んだり、けっこうハードだ。著者は仕事でフィンランドに行って家庭を持った日本人。30年以上弾いていなかったバイオリンに40過ぎてから再び触れ、ペリマンニに惹かれて参加するようになる。要請があれば出かけていくペリマンニ。ある時は老人ホームに招かれ、ある時は踊り狂う人々とともに数時間弾き続け、ある時はお役人のイベントに花を添える存在として。各地のペリマンニが集まって演奏する会もある。
ペリマンニをやっていても、一銭の得にもならない。家族への負担も増す。しかも、著者はこの期間あまり仕事をしていなかったらしい。しかし著者は、音楽に対する抑えがたい湧き上がる思いをペリマンニの活動で見出して、40数年間潜んでいた情熱を自覚することになった。
最後に、著者は仕事もしないで音楽ばかりやっている自分の有様に悩み、家族を置いて一人日本に帰って行く。その道すがら、著者は自分が音楽活動をしていたことで、出会った人々と只の挨拶以上の会話が楽しめて親しみを感じることができた。ペリマンニ魂、とでも言えるようなものが染み付いたことを思いつつ、ごちゃごちゃした日本に戻る。

40に差し掛かると、普通は、ああ自分はこういう人間なんだって大体知り尽くしてしまう。35くらいまでの「なんでもできる」感が薄れてしまう。だから、それ以降の人生は「自分の得意なことはこれだからこうすれば効率的で」というように、枠にはめて無難に自分をドライブして行こうとする。
でも、この著者のような、45過ぎてから音楽に目覚めたように、まったく思いもしない分野で湧き上がるような思いを持つことも可能なのだ。
とても希望が持てることだ。思いもしなかった新しいことは毎日、生きてれば降ってくる。何があるかわからない。