仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

本嫌いの私が本を読んだ自慢

人生が嫌になってくると、名越康文先生の本を読んで癒やされたくなるのだけど、残念なことに、仙台市図書館にはあまり置いてない。関西のひとだからだろうか。そんな名越先生の著者名で検索していたら、ひょこっと靖幸ちゃんの名前が出てきた。永遠のだいすきなアーティスト、岡村靖幸ちゃん。靖幸ちゃんの本に名越先生が出ている?と、驚いて借りたら、対談集だった。
対談集は好きだ。名越先生は後の方に総まとめ的なかんじで対談する。
スワッピングのカップルと、田原総一朗さんの話の方が印象的だった。スワッピングの話は、一般的には不倫とか非常識とされる行為のはずなのに、当事者達の語り口がすごくピュアだった。夫婦って多少は気が合うとはいえ、全然違う人間が一緒にいなきゃいけなくて、たまにイベントして盛り上げる努力は大事なわけで、レストラン行くとか映画見るとかライブ行くとか温泉旅行に行くとか、そういうのの一環でスワッピングする人もいるのかなと思えるくらい、自然に思えてしまった。もちろん当事者にとっては普通で自然だからこそ続けているのだろう。
やっぱり子供ができたらこうはいかないんだろうなと思った。まぁそれは、子供ができたら各種盛り上げイベントのディナーやら旅行やらが優先順位が下がって、思うようにいかなくなるのと一緒で。
田原総一朗さんは、私にとってテレビで怒鳴っているおじいさん、ぐらいの知識しかなかったので、こんな人だったとはと驚いた。若いころアグレッシブに映像を制作し異端視されるぐらいだったなんて。そして、テーマの純愛であるところの、節子さんとのこと。お互い家庭がありながらも惹かれ合い、30年ちかくの年月ののち、結婚する。そのことについて書いた本を節子さんと共著で出版したばかりで、そして節子さんはガンで亡くなる直前だった。「妻を亡くしたら生きていけない」と、ためらいなく言い切る田原さんに、靖幸ちゃんは絶句するしかない。壮絶な思いの強さの印象を受けた。
この本の中で靖幸ちゃんはあれほど濃いキャラなのに、人の話を引き出すのに徹している。やっぱり対談相手は異端な人が多いけど、みんな堂々と人を愛している。いろんなかたちで。男女が適齢期で出会って結婚して、という、工場で量産されるような誰もが期待し目指すようなものばかりが愛じゃない。「こうだ」「こうあるべき」っていうのは、ないんだよな。正しいも間違いもないんだよな、と、改めて実感。

そして純愛カウンセリングに出てきた田原総一朗さんの本も読んでみたわけです。
「どちらかが死んでから回想して書くのが普通なのに、生きているうちに書くなんておかしい」と、田原さんは純愛カウンセリングでも、この本でも言っている。でもふと思ったのだけどなんで死んでからが多いのだろう。借りた本は第4刷で、おそらく初版ではなかったと思われる、節子さんの享年が付記されている。
表紙の田原さんと節子さんの写真がとてもいい。そして後ろの方に出てくる、節子さんが田原さんに膝枕している写真もとてもいい。
ダブル不倫でかなりの困難を乗り越えた末の結婚かと思ったら、既に2人は長年戦友みたいに会って仕事の意見をぶつけあっていたので、暗黙の了解ができていたようだ。再婚するならこの人でしょ、と周囲に思われるくらいに。
靖幸ちゃんとの対談ではすごく激しい印象を受けたけど、この本はそうではなかった。ながーい川の流れのように生きてきて、上流はそれなりに激しかった、でもそろそろ下流で、波も立たずゆったり流れていますよ、そんな愛の形が読み取れる。お互いが交換日記のように、代わる代わる文章を書いて、こんな風に共著で本が出せるぐらい愛の爛熟期を迎えているような人たち、滅多にいないのではないだろうか。でも、亡くなってしまった、節子さん。悔しかっただろうなぁ。
死ぬと言っていた田原さんは、生きている。相当な辛さを乗り越えてきたのだと思う。ただのうるさいおっさんの印象が、かなり変わった。

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背表紙のほにゃほにゃした字と長嶋有の本だというので思わず図書館で手にとって、借りた本。
ほにゃほにゃしてて面白かった。
家電の部分に着目した書評らしい。書評っぽくない。もっと長嶋有読もう、と思った。

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川上弘美のエッセイ。
こちらもほにゃほにゃしている。
川上さんはどこでも自転車ででかけるらしい。親近感を持った。
前読んだエッセイでは、電車に載ったり、山に行ったりして、ふらっとお酒を飲んだりしていたので「うらやましいなぁ」と思ったのだが、このエッセイでは「外で飲むことはほとんどない」と書いてある。そして自分で作ったものの紹介をしている。この違いはなんだろ?落ち着いちゃったの?忙しくなったから、なのか。それとも……子供が小さい時は毎日の家事ルーチンから脱する一瞬のそとごはん・そと飲みがすごく嬉しかったのが、子供が大きくなって手がかからなくなり、外ごはんのありがたみが減った……とか?そういうことなら共感するなぁ。
川上さんの本は、小説にしろエッセイにしろ、白く乾いてチクリとした痛みがわずかに漂う。川上さんも離婚して、まっとうな愛の道から外れた人だ。そういうひとだけが持つ仄暗さがあるから、共感しちゃうんだな、いろいろと。


本をたくさん読みたくなって、山積みになってしまい、毎週のように図書館に通う時期と、情熱が失せてなんにも読まない時期とがある。
しばらく、積み上がっていたけど、今また落ち着いて、読まなくなってきた。