仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

「豚キムチにジンクスはあるのか」絲山秋子

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清々しい、空間を薙ぎ払って進むような文体に、親近感を感じていつも読む、絲山秋子。女性らしさにまといつく、ねとっとした、めんどくささと、妙な柔らかさがないのが、好き。(好きだというブログを昔書いたなと思ってみたら、あった。なんだこの甘ったるい文、私が書いたんでしょうか…)
そんな絲山秋子の連載グルメエッセイ。やっぱりバッサバッサしていてすごく気持ちのいい楽しいエッセイでした。
タイトルからして「豚キムチ」。豚キムチといえば、「センセイの鞄」でツキコさんとセンセイが公園で豚キムチ弁当をつつくシーンを読むと突発的に食べたくなるんですが、こっちはぼっち自炊の豚キムチですから、そういう異性の存在とか押し倒すパワーが半端ないです。

冒頭の「力パスタ(読み方はkapasutaじゃないよ、chikara-pasutaだよ)」でやられてしまって、どうしてもその危険なビジュアルと味の組み合わせを試したくて、生協で餅とイカスミパスタソースをこっそり買おうと思ったらイカスミがなかった。近日中にどこかで調達して実行してみようと思う。


鬱病持ちで、体調が悪くなると食えなくなって、年に20〜30kgは体重が上下するという絲山さんなんだけど、この連載のためにすごく食ったみたいだ。さらに連載のために体を張って実験的にいろんなことをやる(冬に冷やし中華4食連続、エスニック食い倒れツアー&後日自炊エスニック、サーモンづくしetc)。やたら食っている回は、読んでるこっちも辛くなってくるけど、楽しそうに自炊してる回は、真似したくなる。ビールとかワインとか飲みながら料理するの楽しいよなー、とか、新鮮な野菜が大量に手に入る群馬に私も行ってみたいなーとか、キャンプの料理の豪華さが羨ましくなったりとか。
良質な食材をふんだんに使ったすき焼きも鍋も楽しそうだけど、インスタントも駆使し栄養バランスとかカロリーとか気にしないで一人で作る、冒頭の「力パスタ」みたいな料理のほうが惹きつけられる。

だってさ。家族を持ってしまうと自炊ぼっち飯ってそんな自由にできないじゃない。いつだって家族のことを考えて飯を作らなきゃいけないし、経済的栄養価的いろいろを考えつつ、日持ちもバランスも考えつつ。ときどきめんどくさくなる。夕飯の炊事の時間は、1日で一番イライラしてる時間だ。

だから、密かに思った。私も、昼飯は、自由でいようと。
主婦の昼飯には、普通好きなものなんて食べられない。あまりもの食材の処分のことしか考えてない。カビそう、腐りそうな食材を家族に食べされられないから、自分で炒めて食べちゃったりとかね。
(ママ友と優雅にランチ?それどこの国の話ですか?)
しかし、昼だけは自由になろう。よし、決めた。豚キムチW丼も食べよう。力パスタも食べよう。
私のためだけの料理を楽しく作って食べるんだ。
そう思って特売の米国産豚肉を家族に黙って味噌漬けにしている。


ついでに、夕飯作りながらビールを飲むというのを、ここ3日ほどやってみたら大変良い気分で過ごせました。
毎日は飲めないので(早朝バイトのため週に3日は飲めない)アル中になることはないと思います。


連載の最後に、絲山さんはお父さんに料理を教わる。これがまたおいしそうなのと、悔しいながらほろりとさせられるのと。爽やかな読後感でした。