仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

「僕は眠れない」椎名誠

椎名誠さんが長年不眠症に悩まされているという。

ぼくは眠れない (新潮新書)

ぼくは眠れない (新潮新書)

 

 肉体派のイメージのある椎名誠さんが…ってこの本を初めて見かけた時はちょっと意外だった。

30年以上の不眠症。その発端は自営業(非、会社員)としてはひとごとではなかった。 

会社を辞め、執筆業に専念。これで定時に縛られず時間が自由になった!…と思いきや、執筆を優先するためにどんどんずれていく生活時間。活動時間が集中できる深夜メインになる。そして編集者は時間を問わずに電話をよこす。(のちに、深夜は電話線を抜いてしまう)

仕事が終わり、眠ろうとしても眠れない。酒の力を借りようとするが、すぐ目が覚めてしまう。ふとんで悶々とし、犬の散歩に出かけ朝食を食べ、家人が出かけた後で仮眠、午後起きてまた仕事。そんな生活になってしまったという。
そしてある日起きた、ストーカー事件。今みたいに個人情報は厳密に管理されていないから、ある病的ファンが家に来てしまった。幽霊のようなその女の姿がトラウマになり、椎名さんの不眠はさらに悪化してしまう。

椎名さんは「岳物語」のようなユニークな私小説が知られているが、SF作家でもあり、また世界のあちこちに出かけて旅行記もたくさん書いている。長時間の飛行機の移動や、旅先の環境でも睡眠は容易に乱される。

だが体を使ったアウトドア活動をして大宴会をしてキャンプをした時は、ぐっすり眠れると言う。仲間たちと酒を飲み、焚き火のそばでしゃべり続けている声をBGMにしながら、テントと寝袋という環境としては決して快適でない状況で。これ、すごく共感できる。焚き火の赤い光と薪の爆ぜる音と、誰かの話し声、これ最高にいい睡眠導入剤だろう。ましてや昼間は体使ってるんだもの。とろーっといい眠りに落ちそうだ。

不眠と言うのは、私自身は滅多に経験はないけれど、どうしても頭を離れない考え事があったり、やたら頭を使って興奮したあとの興奮さめやらない状況でなったりする。体より頭を酷使しがちな、現代的な生活をしている者だけのものだろうと椎名さんは推測する。言い方は失礼だが未開の地に住む民族には、無縁の病だろう。

椎名さんはお酒に頼ったこともあるが効果的でないと実感して以来、必要に応じて薬でコントロールをしてきた。この薬はこういうタイミングで飲めばこのぐらい効く、というのがわかっている。「眠る」という行為について研究された、専門書も紹介されている。また長年お世話になっている専門の医師にも取材し、睡眠について詳しく聞いている。

専門家の話を聞くと、私を含む一般の人の多くがやはり、睡眠の意義を誤解しているようだ。

なぜ人は眠るのか?「休むため」。 ところがそう単純ではないようだ。起床している時間が「表」、に対する「裏」ではない。車のエンジンを切って車庫にしまうというものでもない。肉体にとっては休息の意味が強いが、脳にとっては昼間受けたダメージを修復し再構築する。寝ている間も脳は活発に動いているのだ。やはり睡眠は、必須だからしなきゃいけない、削ってはいけないのだ。
私たちは、睡眠を軽視しすぎじゃないだろうか。改めてそう思った。いっぱい寝たほうがいい、ではなく、寝なきゃいけないという認識になった方が良い。

脳は昼間、細かいダメージ、ストレス、悩み、感情、もやもや、そういったものを蓄積続けずっと過ごす。そして睡眠によってインプットを切ったら、それを一生懸命直して納得いかないことを一生懸命納得いくようにして、そしてすっきり翌朝迎えるようにしているとしたら。寝不足って、脳に対する虐待なんだよな。ケガをしても手当てもせずただ血を流しっぱなしにしているような状態だ。私たち日本人が精神の病をいっぱい抱えてしまうのはその辺に理由があるんじゃないのかなあ。

睡眠についていろいろ調べてみたけれども、じゃぁどうしたら眠れるのか。椎名さんは結局、わからなかった。特効薬もない。ちょっと絶望的だけど、30年以上も不眠と付き合っている椎名さんは今後も、自分なりに試行錯誤してやっていくしかないのかもしれない。

私自身も睡眠の重要性を再確認したが、家族やアルバイトの都合早起きして、家事や他人のペースに合わせると、夜は遅くなる。睡眠時間は平均5時間半。圧倒的に少ない。
昼間はどうしても、眠気が襲ってきて昼寝してしまう。

「不眠」じゃなくて「睡眠不足」だが、ちゃんと睡眠が取れていない問題は同じだ。

もっと睡眠について本をいろいろ読んでみようと思った。

そして、私の睡眠時間を短くしてしまういろんなものを、積極的に排除していきたい。