仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

「だらしない夫じゃなくて依存症でした」三森みさ

ウェブで見て惹きつけられ、本も買うことにした。予約して、やっと入手できた!待ち遠しかったよ。

酒に限らず、依存症入門としてとてもいい本です。 

だらしない夫じゃなくて依存症でした

だらしない夫じゃなくて依存症でした

  • 作者:三森 みさ
  • 発売日: 2020/03/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

私、前のブログにも書いたけど、これまでもアルコール依存症の本を読んだ。

monyakata.hatenadiary.jp

 

「だらしない夫じゃなくて依存症でした」(以下、「だら夫」)に比べると、この2冊はちょっとハードかもしれない。読んだ人が逆に「俺はこんなんじゃねーぞ」って思って見なかったことにしてしまうかも。

それに、この2冊との大きな違いは、主人公が当事者(アル中の本人)ではなく、家族であることだ。アル中の実態!とかでなく、回復の方法とその過程が中心になっている。

 

当事者もつらいが、家族はもっと辛いのは用意に想像がつくだろう。暴言や暴力を振るわれ、生活は困窮し、家庭も崩壊する。だが、このまんがはそういった現状に目を背けることなく、でも明るく、優しく、もちろん楽しく読める。

今、ちょっと酒の量が多いだけとか、ちょっとパチ屋通ってしまうだけとか、そういう状態の人も読んでほしい。そういう人が家族にいる人も気軽に読んでほしい。

 

「だら夫」の主人公ユリの夫ショウは、営業職についてから酒量が増え行動も酷くなりやがて仕事にも支障をきたすようになる。ユリの友人や会社の先輩が実はかつて依存症に苦しんだ人だとわかり、彼らが「完治」はしなくても「回復」していることで希望を見出したユリは、行動していく。

 

スリップとか、自助会や断酒会、家族会などは前読んだ本で知ってたけど、一層わかりやすいし、登場人物の気持ちが胸にせまってくる。

 

驚いたのは(前にwebで読んでいたはずなんだけど)、ショウのことを保健所に相談に行ったユリと相談員との会話。

旦那さんがお酒を飲んでいることで困っていることを書いて下さい、と言われて、ユリはスラスラとたくさん書く。

では次にユリがどんな生活を送りたいか、書いて下さいと言われ、「夫にこうしてほしい、夫がこうであってほしい……」と、またたくさん書く。それを見て相談員はこう言うのだ。
「山下さん(ユリ)ご自身はどうされたいですか?」
「えっ?夫にお酒をやめてほしいですけど…?」
「もちろんそれも大事なのですが。山下さん自身が
『○○に旅行に行きたい』『数年後こんな仕事をしてみたい』……などはありませんか?」
「私が…………?…………やりたいこと?」 

ユリは逡巡したあげく、答える。

「わ……わからないです…………………」 

 

これをまったく同じ体験をしたのだ。少し前。

私もどうしても辛い状況になって、とあるところに相談に行った。その時に「どうされたいですか」と聞かれて「相手にこうして欲しい」としか出なかった。

やはり「あなた自身はどうしたいですか?」と聞かれた。考えて、驚くほど、なにも思いつかなかった。

「……………特に、ないです……」

と答えてしまった。

 

そう、追い詰められた家族って、やりたいことが消失してしまうのだ。自分の頭の中が今目の前に常に晒されている問題でいっぱいになって。

やりたいことはたくさんある。

実はそれを忘れないように、Evernoteにリストを作って、少しずつ実現したり増やしたりしていたのに。しばらくそのリストの存在を忘れるような精神状態になってしまう。

とにかく、一人で全部抱えないことが大事なのだ。

依存症の回復には孤立しないこと、支える周囲の存在が重要と、あらゆる本でイベントでwebで繰り返し伝えられる。

顔見知りに「助けてください」と言いづらいのは当然なので、相談機関や匿名の自助会がある。(そっちの方が専門家がいるから、下手に知り合いに言って逆効果のアドバイスされたり、お前が悪いと責められたりするよりいい。まんがにも身内に辛いことを言われる例が出てくる)

 

もちろんまんがだから、展開は早いし多少都合のいいところもある。なにより、現実の周囲はこんなに理解があり暖かくないだろう。でも、この本を読んだ人が、優しい「周囲の人」になればいいと思う。そういう意味で、特に悩んでない、ごくごくふつーの人にこそ見て欲しい気もする。

本は大幅に加筆され、参考資料も充実しているので買って欲しいですが、まずは、こちらから。

www.jiji.com

 

さて、わたしも、やりたいことをしよう。