「食べる女」「続・食べる女」筒井ともみ
映画が面白そうだった。けど、見逃してしまった。まぁいいや、原作読んでみよう、と、図書館で借りた。
いろんな女(二人だけ男)が主役の短編集だ。
作者の筒井ともみという人は、ヒットしたドラマを数多く手がけた脚本家でもあるらしい。
しかし。ううむ。
なーんか、面白くなかったな。
読後感があまり…。そのストーリーごとの主役がいいんだか幸せなんだか、もやっとよくわからない終わり方をする。まぁ幸せなんでしょうけど、うーん、ってかんじ。
展開に、急に「父が死んだ」「母が死んだ」が多い。安直な印象を受ける。
あと流産やアトピーなど病気の描写で「えっ。そんなこと根拠もなしに書くもんじゃないよ」と眉をひそめたくなる部分があったり。
いちばんがっかりなのが、「食べる」とタイトルにあるのに、出て来る料理がおいしそうじゃないこと。
料理名や材料名、素材名はたくさん出てくるのに、味や食感の描写がまったくといっていいほど、ないのだ。不思議なくらいに。だから、ぜんっぜん、おいしさが想像できない。おいしいかどうかすら、わからない。
映画の予告編で登場人物たちがあれだけものをぱくぱく食べて、「おいしい〜!」と言ってるのに。きっとそのへん映像化で補われたのだろうと思う。
まぁそもそも、食欲と性欲がテーマらしいから、味覚は抑えたという可能性がある。ただその、食欲と性欲ののまぜこぜの具合が、あまり読んでで心地よくない。ときおり、あからさまで不快感まで感じてしまう。
挽肉が好きな女がボールでぐちゃぐちゃ挽肉をかき回すあたりなど、その擬音が連なる文を目で追うと気持ち悪くなる。
「めしにしましょう」で「私は食欲と性欲を混同するのが好きくないのよ」と青梅川さんが言ったセリフを放ちたくなる。
彼女たちのお相手となる男たちも、なんだか都合が良すぎる。
ちなみにオトコとカタカナで表現するところがあるが、そのカタカナの語感もなんだかいやだ。これは、一個人の男性ではなく、クラスとしての、不特定多数で誰でもいい場合の男を「オトコ」と表現しているのだ。わかってるけどそういうのいやだ。
しかし、ね。ここに出て来る登場人物のような、自由な、性も食も住もそれぞれ、欲に素直な生き方、どうしようもないけど「いいなぁー」と思ってしまうのよね。
好きなところに住んで、好きなものを食べて、好きなお店に行って、好きなところに行って(さらに素敵なオトコとたくさん出会い……というのは、別に望まない。リスクもあるし)
ただ、その結果、彼女たちは、幸せなんだかいいんだかわからない状態になっているのだけど。
ファンタジーであり警告でなのだな、これは。現実にまみれた私たちオンナのための。
ほどほどかっこ悪く、ほどほどこちらを裏切って、トータルで普通よりほんのちょっぴり、いいオトコ。ああ、そんなオトコに、好きなことづくしの暮らしの合間に、出会えたらいいなぁ、でも、別にハッピーが待っているわけじゃぁないのよっていう、ね。
まぁ、機会があったら、映画も見てみたいですね。たぶん、おいしく食べる彼女たちに出会えるのでしょう。