「20代で隠居」…欲望まみれを自覚
図書館で50人だか待ちでようやく借りられた本です。
大原扁理さんは、phaさんがNHKのハートネットTVに出た時に出てきた人で、気になっていた。phaさんと仲良しな人はたいてい面白い人だから。
週休5日、である。家賃が25000という格安の物件に住んでいるにせよ、一体どうしたらそんな生活ができるのだろうか。うらやましい。
しかし読んだ結果、うらやましい気持ちは消えた。
大原さんの隠居を可能にしているのは、とにかく「欲を無くす」ところだ。一ヶ月の支出や献立などをつまびらかにしているけど、
「はー………」
としか、言えない。
家賃25000円で不便なところに住むのも、週に2日だけ働くのも、いいなぁ、と思う。朝起きて、ラジオ体操して、足湯して、散歩して、夜は早く寝るとか、素敵だと思う。
けど、こんだけ欲と無縁な生活しなきゃいけないのかと思うと、やっぱ「無理だわ」となる。
とにかく肉は食べない。晩酌もなし。基本は玄米、野菜、野草、そば。おやつもしるこサンドぐらいだし……外食もジャンクフードも食べるよと書いてあるけど、頻度は月に数回くらい。
とりあえず「食」について無欲な時点で、私には無理だ。私はあらゆる欲の中で食欲が突出している。うまいもの食べたい。あれもこれも食べてみたい。そしてお酒が飲みたい。ビール飲みたい。この世においしいものがあるなら食べなきゃ損じゃん!
さらに大原さんは物欲もない。あれしたいこれしたい欲もない。世界一周したそうだからそれで満足してしまったのだろう。その達観した境地にはちょっとあこがれるけどやっぱり私には無理。
私の欲は、悲しいかな、リアルな体験に結びつくものが多い。
基本的に「新しいものを知りたい。面白いものを見たい。体験したい」ぶっちゃけて言うと様々な幅広い意味で「快感を得たい」欲があると、お金とリアルに動くための時間が食われる。これは、清貧とは両立しない。でかけるにも金がかかる。体験するにも金がかかる。
欲しいものがネットや文字で手に入る人ならいいのかもしれない。大原さんみたいに本をたくさん読めれば知識欲が満足するみたいな人ならいいのかもしれない。
でも、私は、体験したい。
肉が食べたい。うまい魚も食べたい。季節のおいしいものを食べたい。自分ですっごいおいしい料理作って食べたい。その時期に発売されたお酒を飲みたい。コンビニの新製品は試してみたい。美味しいものの産地に行って美味しいものを食べたい。新しい飲み屋さん開拓したい。
ツーリングに行きたい。キャンプに行きたい。温泉に入りたい。マッサージされたい。寝たい。散歩したい。昼寝したい。知らない場所に行きたい。湯治したい。一人旅したい。
ライブに行きたい。新しい素敵なアーティストの音楽聞きたい。面白いイベントがあったら出たい。面白い取り組みをしている人に会いたい。東京行きたい、外国行きたい、四国に新潟に行きたい。
綺麗な夕焼けが見たい。飛行機に乗りたい。新幹線に乗りたい。船に乗りたい。ビジネスホテルに泊まりたい。綺麗な海が見たい。見たことのない景色を見たい。
……と、まぁ欲望まみれなわけだ。
「〜たい」を列挙していたら、岡村靖幸ちゃんの「愛はおしゃれじゃない」の歌詞みたいだと思った。そういや岡村靖幸ちゃんの歌には「〜たい」が多い。*1私が靖幸ちゃんの歌が好きなのは欲望に素直で渇望し続けているからかも。
こういう清貧の方々によく見られる、オーガニック礼賛な部分にも同意しかねると感じた。重曹が出てきて「またか」と。重曹って別に魔法の粉じゃなくってアルカリだからでしょー。私も時には使いますけど、なんでも重曹で洗剤否定のこだわりは特にない。
あと「無農薬の国産のものを」って繰り返しているのも、うーん。それは立派なのかもしれないけど、農薬使わないと非常に大変なことを私は畑をやって知っているので、一律に農薬はいかん、無農薬素晴らしい!というのはある種の思考停止を感じてしまうのであった。
ただし、大原さんはあまりこだわらない。しんどければやめるし人にも合わせるし例外もある。そのへんの柔軟さはよいことだと思う。人におしつけてもいないし。
大原さんと私は似ているところもある。他人と距離をとりまくるところ。付き合いが非常に悪いところ。人からの誘いは断りまくる。知り合ってしまったら近寄るなオーラをだしまくる。
これ、まったくもって私と同じだ。できるだけ多くの人とお友達に!というSNSの思想とは逆。 その理由は、私の場合、単にうっとおしいというのもがるけど、他人と関わることで自分の自由が減って身動きが取れなくなるのが嫌だから、かなぁ。
大原さんは「人と関わる欲がないから」のように思える。
欲を持ったまま好き勝手に自由でいたいと思ったら、結局お金と時間がないといけない。そして私は今後も、それらを渇望し続けることだろう。
まぁ、大原さんみたいな生き方もいいよね。自分が欲望まみれであることを改めて実感した本でした。
なお、大原さんは最近もう一冊本を出した模様。
私としては、こちらより「(性欲も少ない大原さんが)デートの前にリビドーを高めるために読む」と紹介されていた叶恭子の本が読みたい。
どうせ私は欲まみれなのだ。
*1:もっとも「愛はおしゃれじゃない」の歌詞は靖幸ちゃんじゃないけど。