仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

ミニトマトのピクルス

人の記憶っていい加減だよなあ、という話。

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一週間前の私は秋田の実家に帰省していた。私の植えたミニトマトが、一人暮らしの母が食べきれないほど実をつけていた。「食べきれない」と言う母に、私は自信ありげに微笑んで言った。「ピクルスしよう。本で読んだの」
レシピはうろ覚えだったので、一応検索した。
(こんなかんじ)

www.mizkan.co.jp

タッパーに「どばっ」と、らっきょう酢を入れて、そこにつまようじで三か所ほど穴をあけたミニトマトを漬ける、だけ。ついでにピーマンやたまねぎ、ゆでたみょうがも漬けた。
一晩経って食べると暑い日にぴったりのおかずになった。

このミニトマトのピクルスは、私の大好きなエッセイ集にあったものだ。大学生の著者と認知症で物忘れをするようになったおばあちゃんとの会話で出てきた。盛岡なまりのおばあちゃんの優しい口調が、印象的だった。
いつかミニトマトがたくさん手に入ったら作ろうと、ずっと思っていたのだ。

ところが。
仙台に戻ってそのエッセイ集を開いてびっくりした。
ミニトマトのピクルスでは、なかった。
ラディッシュの酢漬けだった。

「あったなの簡単だべじゃ、包丁で細げぐ切り込みいれで、らっきょう酢さ漬けておくだけだ」

(6月24日 より引用)

えっ、ラディッシュ?なんで私はミニトマトだと思ったんだろう。
どこで記憶が壊れてしまったのか?なんの疑問も持たず、ミニトマトだと…
思い当たるとすれば私はラディッシュが好きではないので同様に赤くて丸いものとしてチェンジしてしまったのか。あるいは、エッセイの別の文でやっぱりおばあちゃんがトマトジュースの作り方を喋るところがある。それと混ざってしまったか。

にしても、ミニトマトラディッシュでは違いすぎる…実と根だよ。でも私は自信たっぷりに「ミニトマトのピクルスはらっきょう酢に漬けるだけ」と覚えていたのだった。

仙台に戻ってから自分でも作ろうと思い、作る前にもういちど本でその部分を読みたくて開いてみたら…あれっ。
というわけである。

実際ミニトマトのピクルスはおいしいし、保存もきく。まあいいや。ありがたいので結果オーライということにしておこう。
あと、ラディッシュの酢漬けも嫌いとか言わずに作ってみようと思った。

しかしせっかく読んだ本の中身を、しかも印象的で好きな部分を、間違えて覚えていたというのは、どういうことなんだ。失礼じゃないか。もうすぐ52歳になろうという自分の脳を「老い」が容赦なくダメージを与える。ちょっと悲しい。

 

本の名前は、「わたしを空腹にしないほうがいい」。著者は、くどうれいんさん。

booknerd.stores.jp

久しぶりにページをめくると相変わらず(変わってたらへんだが)キラキラしていて、和菓子の「琥珀糖」みたいなエッセイが俳句とともに並んでいる。記録によれば私は2019年に買ったようだ。そのあとくどうれいんさんは絵本を出版したり芥川賞の候補になったりして、知る人ぞ知る存在だったのがすごくなっていく。今後もご活躍をお祈りしております、と言いつつ、私はくどうさんの本を全部読んだわけではない、すみません。

くどうさんには友達がいて、折に触れて感謝の気持ちが光っている。まぶしく感じるのは若さではなく、心から存在に感謝できるひとたちに恵まれているところかもしれない。

Amazonでは売っていないので、BOOKNERDさんの通販か、お近くの取り扱い店でぜひ買ってください。ちょっと出かけたい時とか旅とかのおともにちょうど良い。