仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

岩沼遊歩

宮城県岩沼市にある金蛇水神社にJRと徒歩で行ってみたら予想以上に楽しかったという話。

 

友人が怪我をした。
友人なんだか知人なんだか。誕生日を祝うメッセージを送ったらお礼とともに「入院している」と返事が来た。はっ?何があった?どういうこと?質問攻めにしたい気持ちを抑え「仙台にいるの?」と聞くと、私の自宅近くの病院に入院してるという。コロナ禍で見舞いはNG。差し入れは可能らしい。じゃ、「なにか必要なものあったら…近くだし、比較的時間に自由は効くよ」と言うと「病院ですべて事足りてるのでお気遣いなく」と。
そうですか。
ならば、私にできることは何もない。祈るしか、代理で酒を飲むしか。
 
SNSで彼の近況がシェアされるとたくさんの心配と「お大事に」のコメントがついた。小春日和の夕暮れみたいな朗らかな性格が愛されて全国にファンがいる。
私もその一人として、朝のランニングを兼ねて神社にお参りして怪我平癒祈願するということをはじめた。これなら迷惑もかからないし、自分もランニングをさぼらなくてすむ。
 
一週間も続けると近場のメジャーな神社仏閣は行きつくしてしまい、ふと「お参りを兼ねて小旅行はどうだろう」と思いついた。
折しも、大好きなジェーン・スーさんの新刊が届いたばかり。

おつかれ、今日の私。

電車で本を読みたいな、と思った。自宅だとどうしても雑事が気になって集中して読めない。
検索して一番上に出てきた、岩沼の金蛇水神社に行ってみようと思い立った。
 
 
仙台駅から東北本線で20分ほど。予定通り読書をしながら、岩沼駅へ。
朝からの雨が晴れて12月にしては暖かい。Google Mapによれば、JR岩沼駅から金蛇水神社は3.2km。バスは一日数本。朝5km走る人間がこの距離をタクシー使うわけにはいかない。
駅周辺の住宅地をてくてくと歩いた。人も少ないし静か。12月なのに動いていたら少し汗ばんできた。いい散歩日和だ。ふと視界の端にこんもりとした森が映った。おや、公園がある!吸い寄せられるように足を踏み入れた。

朝日山公園というそうだ。おお、眺めが良い。古墳なのかここは。

石のお堂に収まった木像。まつぼっくりが並べられている。子供らがやったのかね。微笑ましい。

湿った落ち葉を踏みしめて木々の間を歩く。
足元の松葉から、つんと爽やかな松の香りが漂って来たように思えた。子供の頃祖母が作っていた松葉酒の香りのような。気のせいかもしれない。
こういう起伏のある場所、私はついつい入ってしまうのだ。なにか面白いものがあるんじゃないかと。そしてやっぱり面白い景色に出会える。平坦な道をまっすぐ進めない病気らしい。まるで私の人生のようだね。
 
おお、池がある。鳥がたくさん!

つがいの白鳥、そしてカモ、カワウ、無数の鳥たちがいた。すごい数。私がそばを歩くと「さわさわさわ」と水音を立てて遠ざかっていく。いやー楽しい眺めだ。気分いいなぁ。

小さなお社、雷神社。

 
朝日山公園を抜けて、ふたたび住宅の並ぶ道へ。
 
鉄塔が空へ伸びる。鉄塔岩沼支線4。ということは近くに変電所があるんだね。

 

「金蛇水神社」ののぼりが立つ道へ入ると、一気に農村っぽい光景になった。周辺は田んぼと畑だ。人参や白菜、大根など冬の野菜が冬空を目指して伸びている。

 
そして突然、違う空気の場所があった。大量の人の気配。
こんな農村風景の奥に、広い駐車場があってたくさんの車が並び、新しく綺麗な建物がある。え、まさか、これが。

その建物は金蛇水神社の併設の「SandoTerrace」という商業施設だった。お土産屋さんと食堂もある。おごそかな神社を想定していたので面食らった。こんな施設が併設されている神社が宮城にあるんだ…
その施設のひとごみを抜けて神社の方へ向かった。神社は庭園の奥にあって、普通に神社だった。みな、真剣にお参りをしていた。
私もお参りして、絵馬を買って願い事を書いて奉納してきた。
一角に蛇の形の浮き出た石がたくさん並んでいて、人々が列をなしてその石を撫でていた。よく見ると、手ではなく財布を出して撫でている。
あー、そうか。ここはお金持ちになりたいお願いをするところなんだな。私もお金は常に欲しい貧乏人だから、やろう…と思ったが、ヤンキーみたいなファミリーが次々やってきてテラテラした財布で撫でていくのを見て、やる気がうせた。
こういうところで貪欲にいかないから、私は一生貧乏なんだろうな。
 
ちょうど1時ごろで、おなかもすいてきた。せっかくだからSandoTerraceのオシャレなガラス張りのレストランで食べようかと見ると、1000円越え。しかもオシャレなメニュー。ダムカレーみたいな白蛇カレーにも惹かれたけど…オリジナルのスイーツも気になるけど…どうも気分が乗らない。多分ね、私こういうところで食べても絶対物足りなくって後で余計なおやつ食べる言い訳にするんだ。
途中の道すがら見かけた中華っぽいお店に行こうと決めた。 SandoTerraceではオシャレなオリジナルグッズがたくさんあって、私はかわいい白蛇さんのパンと、庭園の藤とボタンをイメージした入浴剤を買った。
さて帰るか。

 
来るときと違って帰りはやっぱりちょっと足が疲れた。
遠くに広がる田んぼの上、ときどき飛行機が見える。おおそういえば岩沼だから空港が近いんだった。
ピンクの飛行機はピーチだろうか。空港に遊びに行きたいなぁ。飛行機乗りたいなぁ。
 
さて、気になっていた食堂に入った。
もう2時近かったせいかお客さんはまばら、すべてがテーブル席。椅子がなんていうの、電車みたいなつながった椅子。昭和レトロだ。こういう雰囲気のお店落ち着くし、味も期待できる。
単品で回鍋肉飯をお願いした。厨房へのオーダーは中国語だった。厨房からは中華鍋を振る音が響いて来た。
やがて熱々の回鍋肉が乗ったどんぶりが運ばれてきた。

油でつやつやして、これは気をつけないとやけどしますね。はやる心を抑え、ふうふうしながら口に運ぶ。ああ!この濃い味。ごろごろと千切られたキャベツ。こういうのが食べたかったんだよ!そして味が染みたごはんがうまい。
食べても食べてもごはんがあるのが頼もしい。減らない。コンビニのお弁当はすぐに底が見えるのに。あー、おいしかった。
腹いっぱいになって650円という安さが嬉しい。満足してにんまりしながら歩いた。しかし確実に食べ過ぎた。腹が苦しい。夕飯まで腹は減らないなこりゃ。
 
体が重いせいか、駅までの距離がやたら遠く感じられた。行きは寄り道までして、あんなに元気だったのに。暑くてコートの前をはだけて翻しながらがんばって歩いた。
駅について陸橋を歩くと、窓から差し込む日がもう黄色い。「あ、これからすぐ冷えるぞ」まだ3時、などと思っているとすぐ真っ暗になるんだよな。すぐに電車は来た。ボックス席で本を開き、読んでいるうちに意識が遠のき、寝てしまった。
 
自宅近くの駅に着いた時はもう夕暮れ。まだまだ幸福な満腹感が続いていた。
すっかり体が冷えたので、さっさとお風呂を用意し、さっそく買って来た入浴剤を入れた。いい香り!ぬるめの湯につかりながら本の続きを読んだのでした。
充実した一日だったなぁ。楽しかったなぁ。
頼まれてもいないのに勝手に怪我平癒祈願というよくわからない目的で、しかも金運が上がることで有名な神社に行ってしまった。こんなことでもなければ足を運ぶことはなかったろう。怪我平癒の効果は、まあ、ないよね。