仙台広瀬川ワイルド系ワーキングマザー社長

ビールと温泉と面白いものが好きな大学生男子の母。

粉ふるいを分解して洗ってみた/人の記憶が簡単に変わること

粉ふるいという調理器具がある。ホームシフターとかいう名前で売ってる。中に粉を入れて持ち手のレバーを「かしゃかしゃ」とすると、ふるうことができる。お菓子作りをする人には必須のアイテムだ。購入して18年くらいになる。

私はお菓子作りが好きなので愛用してきたが、最近、どうも持ち手の「かしゃかしゃ」がスムーズに行かず、引っかかるようになってきた。しかもふるって出てくる粉の量が少ない。詰まっているみたいだ。横から手でパンパンたたいて落としながらようやく使っている。

よく見ると、ふるいのネット部分は着色し、汚れもこびりついているようだ。パーツが接する部分に錆のような茶色いものも見える。
多少の汚れは気にしない私だが、錆は、まずいなぁ。
それにうまく使えないのはストレスだ。時間もかかるし。
捨てて新しいのを買うか?

手にもって思案し、ゴミ箱に放り込む直前で、思い直した。長年の汚れを綺麗にするくらい、試してみてもいいんじゃないか。
小麦粉をふるう時しか使っていないから、タンパク質を分解できる洗剤かなんかにつけて、汚れをうるかして(※通じない人はググってください)みるか。分解もできそうだし。

ただの洗剤よりはアルカリ性がよさそうだ。
そういえばプロは粉ふるいをどうやって手入れしているんだろう?
そうだ、まずは粉ふるいの洗い方を検索してみよう。
検索してみた。

 

「粉ふるいは、洗っちゃだめ!」

衝撃の事実。
粉ふるいは洗ってはいけないという検索結果がずらりと出てきた。

がーん。
知らなかったよそんなの!
いままで、使い終わったら水中でがしゃがしゃ動かして、じゃーっと水を浴びせて、乾かしていたよお。

なんだよー、洗っちゃダメなのかよ。
でも納得できないなぁ。汚れるじゃん。汚いじゃん。
しかしもう遅い。18年間洗い続けていた事実は変えようがない。

実際にしっかり汚れはついているし。綺麗にしてみよう。失敗したら買い替えるということで。
粉ふるいの下部のピンを外すと、バラバラに分解できた。ほほうこうなっているのか。シンプルな構造だから組み立ても簡単だろう。そして洗剤を溶かした液を作って、バラバラになった粉ふるいを浸し、一晩うるかした。

 

翌日。
うるかした洗剤液はやや濁り、無数の茶色の粒が浮いている。温泉みたいだ。いや、汚れが落ちているぞ。
要らない歯ブラシでパーツをこすると、つるりと汚れが落ちる。いける!
すごい!綺麗におちることおちること。
錆だと思っていたところは、全部汚れだった。全然劣化していなかった。
ぴかぴかになった!

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うわー新品同様だ、やってみるもんだなぁ。それぞれのパーツを手に取り、うっとりと眺めた。
ふきんに並べて乾燥させた。ブログのネタにしようと思って写真も撮った。
乾いたので組み立てようと思ったが、そこで「ネットで既に誰かが分解整備しているに違いない」と気づき、検索した。

あった。
私のと同じ粉ふるいだ!

ameblo.jp

全粒粉?何度もふるってるけど気にしたことなかったなぁ。

で、手元の粉ふるいを組み立てにかかる。

…構造が簡単だから…あ、あれ?どういう順番だっけ!?

焦った。

ネット2枚、回転する羽2枚、動力伝達の棒、回転するパーツ、軸、ピン、小さなワッシャー(?)。

ええーとお。思い出そうとしたが無駄だったので、先に紹介したブログに全面的にお世話になることにした。

 

…しかしここからが苦悩の道だった。

ハンドルから針金状の棒が内部に来て、白いパーツに前後の動きを伝えてそれが回転する。その部分を、なかなかうまくはめることができない!内部は狭いから、ピンセットや指先を駆使するがなんども外れる。
ううなんだこれ。難しい。泣きたくなった。
苦労の末ようやく二枚目の羽とネットを重ねるところまで来て、はた、と気づいた。

軸がない。全体のパーツを留める軸がない。

 

あれ。
さっき手にもって眺めたよ。私、はぶらしで洗って、このふきんの上で乾かしたのに。
そのビジュアルが鮮明に目に浮かぶ。
おかしい。

慌ててテーブルの上を探す。
落としたな!そのへんに。

ない。
隣の部屋に行った?
ごみと一緒に捨てた?
バッグの中に入り込んだ?
椅子をずらし、床のクッションをはがし、掃除機を導入し、狭いところも探し、

ない。

椅子の座面の隙間。
服のポケット。
戸のすきま。

ない。

あああ。
一体。どこにいってしまったんだ。
おちつけ。

またも床を這いつくばった。
30分も探したろうか。
ああ、ここに監視カメラがあったらいいのに。パーツをどこかへやってしまった瞬間が写っていて、すぐ見つかるはずだ。
人間のログが欲しい。

ため息をついて、諦めた。
一旦、やめよう。他のことをしよう。そのうち思いがけないところから出てくるかもしれない。
さらにパーツをなくさないよう、袋に入れてしまっておこう。
私はビニール袋を用意して粉ふるいのパーツをしまい始めた。

 

と、そこに息子がやってきた。
ものをなくしたときは、自分以外が探すとすぐに見つかることがある。私は息子に話しかけた。
「息子よ、かくかくしかじかで、部品を一つ見失ってしまったんだ」
「なくしたの」と、息子。
「たしかに、洗い終わった時はあったんだよ、ほら、写真に」
先ほど撮った、パーツを並べた写真をスマホに表示して、息子に見せ…

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…ない。
スマホの写真を見て、私は目を疑った。
ふきんに並べたパーツに、軸が写ってない。
あれ?
洗い終わった時点でなかった!?

まさか。
私は流しに直行した。

そして、洗い桶に沈んでいる小さな軸を見つけたのだった。

ショックだった。軸が見つかったのはほっとした。
だけど、完全に記憶が作り替えられていたのがショックだった。


私はその軸を手に取って眺めたと思っていた。細かい汚れが落ちたなと思いながら。でもそれは軸ではなく回転するパーツの記憶だった。手につかんだ感触まであったのに、それも違った。
なんだなんだなにが起きた。

人間の認識ってこんなにもろくて簡単に書き換わってしまうのか。たかが「あるはず」という思い込みで。
「確かに見た、あった、触った」
という感覚が、まったく事実ではなかった。
こんなことってあるんだあ…
認知症や薬などで幻聴や幻覚、せん妄が現れるというけど、こんなに簡単に自分に同じようなことが起きてしまうんだ。
老化、だろうな、と認めたくないが自覚した。(ストレスもあるだろうけど)


気持ちを切り替えて組み立てを再開した。そしてそこからがまた大変だった。
探しているときにばらしたので、粉ふるいは最初から組みなおし。
これが、本当に本当に大変で。
先のブログの人も小一時間格闘したという、持ち手部分が全然うまくはまらず。
そして各パーツを重ねて重ねて、軸がうまく刺さるようにするのが本当に難しい。
ちょっとした衝撃ですべてが無になる。

ようやく、軸を差して、小さなピンで留めたときは心から安堵して、大きな大きなため息が出た。
そして思った。
なんか作業する時、写真って、撮っておくもんですね。

かしゃかしゃとハンドルを握ってみる。
以前のひっかかりはなくなって、スムーズに動くようになった。
めでたしめでたし。

 

というわけで、粉ふるいは洗っちゃだめらしいのですが、既に洗って何十年も使ってしまった私のような人のために、この記事が参考になれば嬉しいです。でも分解掃除は自己責任でね!あと細かいパーツをなくさないように十分ご注意ください。